乳がんは罹患率(病気になる人の割合)や死亡率(病気で亡くなる人の割合)が上昇中の疾患で、現在のところ女性の11人に1人がかかる病気といわれています。その好発年齢が40歳代後半にあり、死亡率のピークが50歳代後半から60歳代前半に高いことから、家庭環境への影響が大きく社会的にも問題となっています。子育て中のお母さんが乳がんにかかることにより、治療に時間と費用がかかり、その闘病生活をみているお子さんにまで心理的・社会的影響が及びます。もし再発した場合には子供が成人する前に亡くなってしまうことも予想されます。このため、乳がんへの対策が世界的に重要視されています。
早期の乳がん(病期Ⅰ)の5年生存率は95%を超えています。病期0(非浸潤性乳管癌)では100%近くとなり、手術のみで治ります。(再発予防として放射線治療や全身療法が必要となる場合があります)。確かに進行乳がんでは生存率が下がり、病期Ⅳ(内臓転移あり)では30%程度といわれています。再発乳がんでは治癒は望めず、進行を抑えることが目標となります。全身に拡がった乳がんは治すことが困難となるため、全身に拡がる前の早期発見、内臓転移が確定する前の早期治療が重要です。そのためには定期的な検診が必要となります。
検診の基本は乳房撮影(マンモグラフィ、MMG)です。特に40歳以降では検診マンモグラフィの有用性(死亡率抑制効果)が証明されています。マンモグラフィで腫瘤の存在が疑われた場合には超音波検査(US)で腫瘍の検索を行います。腫瘍が見つかった場合には良性・悪性の鑑別をつけるため細胞診や組織診(生検)を行います。マンモグラフィでは腫瘤陰影の他に石灰化病変や構築の乱れ(乳腺構造のゆがみ)が指摘されることがあります。この場合も超音波検査で腫瘍を探しますが、明らかな病変がみつからないことがあります。この場合、問題の病変(石灰化やゆがみ)を含めた乳腺組織を切除して検査をすることが必要となります。この際に用いられるのがステレオガイド下マンモトーム生検という検査になります。これらの検査で悪性細胞が見つかった場合に乳がんの診断が確定します。当院ではマンモグラフィ、超音波検査、マンモトームと乳がんの診断に必要な機器が一通り準備されています。さらにCT, MRIなどを使用して病変の発見に努めています。
患者様に負担のかからない姿勢で撮影を行うことが出来ます。
乳がんの確定診断が得られた後は、治療方針の相談となります。
乳がん治療の基本は手術、放射線治療と全身療法による再発予防となります。乳腺手術の主流は乳腺の一部を切除する乳腺部分切除とその後の放射線治療(乳房照射)による乳房温存療法です。しかし、腫瘍が大きい場合や広範囲に拡がっている場合には乳房切除が必要となることがあります。乳房を残す可能性を高くするために術前から化学療法(抗がん剤治療)を行うこともあります。最近では早期がんながら広範囲の場合には乳腺を全摘したのち、人工乳房を用いて乳房を再建する方法(乳房温存乳腺全摘術や乳頭乳輪温存乳腺全摘術後の乳房再建(一次二期再建))も行われるようになってきました。
当院では形成外科医が常勤しており、乳房再建を含めた乳がん治療も選択することができます。放射線治療に関しては専門医を東京女子医大病院からお招きして診療にあたっています。被ばくの少ない放射線治療が行える放射線治療装置も導入しております。全身治療では内分泌療法(ホルモン剤使用)、化学療法(抗がん剤、分子標的治療薬使用)が行われますが、通院での抗がん剤治療には外来化学療法室をご用意しています。
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